大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福井家庭裁判所小浜支部 昭和57年(家)19号 審判

国籍 韓国 住所 福井県遠敷郡

申立人 沢山登志男こと金寛甲

本籍及び住所 福井県遠敷郡

事件本人 関内弘太

主文

本件申立を却下する。

理由

一  申立人の申立の実情は「事件本人は亡関内佐江子の非嫡出子として昭和五五年三月一〇日出生したが、申立人と亡佐江子との間の子であり、申立人は同年三月二一日事件本人を認知し、亡佐江子と申立人とで養育して来た。ところが佐江子が昭和五七年二月一三日死亡したので、申立人は今後事件本人の親権者として同人の監護養育にあたりたく、本申立をする。」というのである。

二  記録及び申立人の審問の結果によれば次の事実が認められる。

1  申立人は大韓民国人であるが、昭和四五年四月ころから亡関内佐江子と内縁関係を結び、両名の間に昭和五五年三月一〇日事件本人が出生した。事件本人は母亡関内佐江子の非嫡出子として同年三月二一日出生届がなされたが、申立人は同日事件本人を認知する旨福井県遠敷郡○○○村長に届出て認知した。

2  関内佐江子は昭和五七年二月一三日死亡した。

3  事件本人は現在まで日本の国籍を離脱していない。

4  申立人には婚姻中の妻はなく、事件本人出生後佐江子と共に事件本人を養育していたものであり、佐江子の死亡後も事件本人を養育している。

三  申立人が前記認定のとおり日本国内で日本法の方式に従つて事件本人の認知を届出たことにより、事件本人は申立人によつて有効に認知されたものである(法例八条二項)。父が認知した婚外子の親権者にだれがなるかについては、法例二〇条の定めにより父である申立人の本国法の大韓民国民法によるべきところ、申立人には配偶者がないから一九七七年一二月三一日改正後(一九七九年一月一日施行)の大韓民国民法九〇九条二項に従い、申立人が事件本人を認知したことにより当然に事件本人の単独親権者となつたものと解するのが相当である。そして、申立人の事件本人に対する親権の消滅事由は認められない。

なお、前記一九七七年一二月三一日の大韓民国民法九〇九条の改正により、未成年者の子の父が親権者となるために「その家にある」ことを要しないこととなつたのであるから、事件本人が韓国籍を取得しこれを喪失していないか否か、事件本人が父である申立人の家に入籍されているか否かは、申立人の事件本人に対する親権の消滅にかかわるものではないと解するのが相当である。

四  以上のとおり事件本人の親権者を定めるについての準拠法である大韓民国民法によれば申立人が現在事件本人の親権者であるから、事件本人の親権者の指定を求める本件申立はその前提を欠き失当である。

よつて本件申立を却下することとして、主文のとおり審判する。

(家事審判官 西田美昭)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例